ISBN:4086301326 文庫 海原 零 集英社 2003/06 ¥600
私の名前は桜野タズサ。16歳のフィギュアスケーター。期待の実力派のはずなんだけど、どうも試合で結果が出せず、おまけにとっても嫌われ者。多分、このイヤミなほどの美貌のせいね。そんなこんなでトリノ五輪の代表切符が遠ざかっていた、ある日……よりによって『幽霊』に取り憑かれた。ねぇ、ちょっと! こんなベタな展開ってアリなの!? 第2回スーパーダッシュ小説新人賞、大賞受賞作!

なんとなくずっと敬遠していた作品でした(笑) 理由の一つはスーパーダッシュ文庫だということ。どうも個人的に趣向が合わないような気がして。 もう一つの理由は、絵が必要以上に"萌え"を主張しているような印象を受けるから。

でも実際まったくそんなことありませんでした。萌えを前面に押し出した美少女小説でなければ、ツンデレ美少女の三流ラブロマンスでもありません。むしろどちらかというと、フィギュアスケートという一風変わったスポーツの世界におけるスポコン物語です。

ヒロイン桜野タズサは五輪代表候補に選ばれている超絶美少女。しかしながらその性格は、(ヒロインに似つかわしくない程に!)自意識過剰でタカビーで、しかも思ったことをすぐ口にしてしまう毒舌家の困ったちゃん。一方、彼女のライバル至藤響子は人気実力ともに国内堂々No.1。そんな彼女と五輪の唯一の切符をかけて争うことになるというのが第一巻のお話。

世論もメディアも、ついでにスケート協会も皆、至藤響子派。おまけに練習では上手く出来るのに、大きな大会では決まってミスをしてしまうタズサ。そんな苦しい状況下、なんとカナダ人男性の幽霊ピートに取り憑かれてしまう。

幽霊に取り憑かれるということはすなわち"感覚の共有"。タズサが見たものはピートにも見えるし、タズサが触ったものはピートにも触った感覚を与える。……これがどういうことかわかるだろうか(笑)?具体的に言ってしまうと、まず着替え、お風呂…。だってピートは"男性"の幽霊だからw そして排泄……(爆)この辺は変にリアルで爆笑物でしたw

さて、本編ではタズサと響子の五輪代表内定決着までが記されています。スケートの技術もさることながら、メンタル面というものが非常に大きく左右されるのだという様子が嫌と言うほどに伝わってきます。作者の力量、表現力ならではですね。さすが新人賞大賞受賞です。そしてラストは思いがけぬ感動を与えてくれること請負です。

思わずフィギュアスケートをやってみたくなりました(笑)
漫画感覚で非常に読みやすくもあるこの作品、お勧めの一冊だと思います。

http://dash.shueisha.co.jp/-ginban/

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Rei

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